第66回バイオフィット研究会

自然再生事業の進め方


国土交通省河川局河川環境課 宮武晃司

■はじめに

 2年前、自然再生を進めていこうと、国土交通省河川局で予算の仕組みづくりや現地の箇所採択をやり始めたとき、自然再生って何だろうっていう話になりました。たとえば多自然型川づくりや近自然工法とどう違って、どういう位置づけになるの、何を目指すの、という疑問が河川局内部にもあり、全国的にやり始めて現地に行ってから「これ言ってるのと違う」ということになっても困るということで、パンフレットを作りました。そのお披露目をしたのが高知でした。確かちょうど2年前の45日、高知放送のホールで外国の講師も招いてシンポジウムを開催した記憶があります。まだこの自然再生は如何でしょうかというものができているわけではないんですが、とりあえず2年間の評価を今日ご紹介します

■なぜ自然再生が必要なのか

 河川環境施策の年表を作ってきました。河川環境といってもかなり変遷があります。我々が認識している最初の取り組みとしては、公害問題とか高度成長期なんていうキーワードが入っていますが、まず1958年に水質から取り組みが始められました。以後、河道の整備であるとか、マイタウン・マイリバー、都市の水辺、街づくり、親水が出てきます。言ってみれば人間対応が多くなってきた中で、1990年に「多自然型川づくりの推進」が出されました。わずか10数年前に河川局が舵をきったわけですが、船が曲がっている途中というか、現場の対応ということでいえば、浸透が進んでいっている段階ではなかろうかと思います。それがベースとなって魚の遡上環境、連続性の問題というのが出てきたり、河川法の改正により取り組みが法律に盛り込まれることになって、自然再生事業が創設されました。これからどうなるかはわかりませんが、私の認識では自然再生事業というのは、これまでやってきた施策を総括的にとりまとめるものになるのではないかと思います。

 河川行政を言うとき、治水の話をしますが、風水害の死者数のグラフを書きました。横軸が年代、縦軸が死者数、対数表を取ってますから、ここは何人、何十人、何百人、何千人の単位というふうに見ていただくと、だいたい各年に起きている死亡者数が右下がりに来ているのがわかると思います。最近の風水害は人が死ぬというよりも、平野部にある資産が被害を受ける。東海豪雨のような集中豪雨によって内水被害が多くなっているという傾向にあります。決定的な水害がなくなってきたという裏には、そういう現実があります。

 これは、見ての通り珍しい川ではなく、真直ぐでコンクリートで固められた川です。真直ぐにしたがゆえに道路も真直ぐにつくれますし、土地も使いやすいという川が多くなってきた。これは、治水上、降った水を早く海に流したいという、もちろんそれもありますが、国土の狭い、とくに平野部の少ない日本においては、直線化したりコンクリートで固めたところは宅地や畑になっています。昔はこういうところが氾濫原、エコトーンという形で、様々な環境があったわけです

 そういう中で、これは日本の生産活動を示すGDP国内総生産のグラフです。1960年くらいで、高度成長期はこのカーブになります。縦がお金になっていますが、だいたいこれが平成9年、510兆円で今はだいたい平行線になっています。

 


社会的・経済的にもだいぶ変わってきている。ちなみにここに河川法の変遷をかきますと、高度成長期のところに利水対策が入ってきたり、あるいはこのところに環境の保全と整備が入ってくるという形で社会的ニーズを踏まえて法律をつくってきたと言えると思います。このように社会的ニーズが時代時代で変わってくるのを、我々は認識し、行政に反映させなければなりません

 安定成長期に入り、持続可能、循環型といった一方通行ではなくて長持ちする社会をつくっていくんだという中で、どんな川が求められるのか。それと地球温暖化というような世界的な環境問題が出てきてます。そういう中で、国民のニーズは確実に変わってきてまして、そこを踏まえた取り組みというのがなんだろうかというところを考えているわけです。


多自然型川づくりの例なんですが、年間5000件、こんなのつくったよというのがきます。全国でやっている河川工事の箇所数です。いずれも、多自然型づくりの発想で、自然の環境を極力変えないで、あるいは変えてしまってもなるべくそれを低減して、できれば代償措置も打つという考えでやっていこうとしています。ただ、かなりレベル差があります。平成7年、5年と書いてますが、当時頑張った例としてあげられているもの、今見るといくつかの問題点が残っているんですが、簡単に言うと、都市排水路のような川を洪水のとき溢れるもんですから広げますよ、広げるのは単に四角く広げるのではなくて、環境に配慮して。しかし、これ見ると何軒かの家が写真に写ってないんです。移転をしていただいているんですね。こういうことで河川工事やるときに環境に配慮してきた。


また、今のは河床の話でしたけれども、今度は流れの連続性の話です。これは川(いざりがわ)と言う北海道の川です。取水堰があって、落差2m。そこに魚道を作りました。鮭があがってきた、という一般的なストーリーなんですが、もう少し視野を線的に連続的に見始めたというのが、取り組み、魚道の改善とかにいえるのかなと。しかも今のは改修事業、維持修繕としてやっているわけですね。環境を改善していこうというために行動を起こすというのは今まで仕組みがなかった。治水をやるためについでに環境に配慮してきたという状況だったということです。

 これは淡水魚の変化ですが、環境庁がやっている自然環境の基礎調査のデータでこの中で、環境の影響を受けやすい26種の魚の確認できる数が各一級水系の中で何種類あったかをグラフ化したものです。1970年代、高度成長に入っていますが、データとしてみると6種類いたとか5種類いたとかありますが、20年くらい時代が過ぎていくと0とか1種とか2種ってとこがほとんどになってくる。そのあと少し増えてくるのが見られますが、これは1990年代ですから多自然型川づくりを全国的にやりましょうといった時期です。

 なにを言いたいかというと、このイメージ図なんです。横軸が時代の流れで縦軸がレベルになっているんですが、治水利水のレベルが時代とともにどんなになってきたか。これは確実に上がってきました。環境はどうなってきましたか?環境は下がってきました。よく開発、治水と環境保全は相反するものだとよくいわれるんですが、この時期のものだと私は思っています。ただ、なんとかしていこうということで、直線化や三面張りの発想からもう少し工夫して、多自然型づくりや近自然工法、魚道の整備などをやっていきながら、がんばってこのカーブを食い止めてきた。ただこの取り組みだけでは、環境のレベルがアップしないんじゃないかということで、川の自然再生をやっていかなければならないんじゃないかという話になりました。

■川の自然再生って何?

 じゃ、川の自然再生って何ってことになるんですが、この絵を見ていただくと川があって町があって、流域です。山で雨が降っていますが、水が流れていくことによって川は生きた動きをしていきます。栄養塩や土砂を含んで流れていくわけです。そういったときに中州ができたり、寄り州できたり、瀬淵ができたりすることがある。侵食、運搬、こういったふうな動き。日々、あるいは季節的な水位の変動というのがあって川の環境が成立する。

 これは多摩川の写真ですが、多摩川では出水が起きた後に、必ず市民の希望者の方と職員が河川敷を歩くようにしています。要は撹乱がどのように起きたかということを、前のデータ、航空写真や測定図をもって歩いていくんですが、ここにあった草本群落がなくなっているねとか、こんなところにこんなに大きく深堀れができているねとか、あそこにあった瀬が変わってるねとかいうことをチェックしています。いわゆるパソコンで言えば強制終了したみたいな感じで、また一から環境が芽生えていくのを認識しましょうという試みです。こういうことを考えていくことによって、川が止まった環境ではなくて動いた環境、生きているということを認識して、川づくりのプランをたてていこうという発想なわけです。

 まとめますと、自然再生事業は何かというと、自然の復元力を生かして行う事業です。3つのポイントがあって、一つは流域の観点から計画を策定しましょう。点や線ではなくて流域の面でいきましょうということ、二番目に少し自然の状況を見ながら段階的に事業をやりましょうと言っています。今までやってなかったんですね。今までは予算は5年間でこういうことをするんだということをはっきり言わないと予算がつかなかったんですが、相手は自然ですから人間の都合通りにはいきませんので、リカバリー可能な状態でちょっとやっては、自然の様子を伺って、手直しがあれば手直ししながら次の行為にうつるということをやっていく。従って予算的にいうと工事やって一時休んで工事やって一時休んでという、まだらな予算配分をやっていこうということです。まだまだ議論が出てきますが、新しいやり方です。三番目はNPO、地元の住民の方々と計画段階から連携しながらやっていきましょう。このことは後で出てくる事例で紹介します。


■事例紹介

・釧路川(北海道)

 着色しているのが釧路湿原です。日本で一番大きな湿原で、黄色いところはヨシ群落やスゲ群落が繁茂する湿地環境なんですが、黄緑のところはハンノキ林で、高木が生えてきている。これが1947年、昭和22年なんですが、50年後どうなっているかを見ると、緑のところが34倍近くまで広がっています。要は乾燥化していきているわけです。ハンノキ林がにくいわけじゃないんですが、湿地環境が失われているんじゃないか。何千年もかけて乾燥化していくはずの湿原が、わずか50年でこういう有様なってしまったというところが大問題となり、地元の先生方が警鐘を鳴らしてどうしていこうかということで、短期的目標と長期的目標を作って取り組みが始まりました。

短期的目標はまず原因として考えられていた土砂の流入と地下水の低下、この2つをまずなんとかしましょう。今まで以上に流入する土砂が増えないことと、地下水が低下しないことが短期目標。長期的には、ここは国立公園の湿原で、これは屈斜路湖なんですが、ラムサール指定された1980年代の流入負荷まで戻しましょう、ということです。今あるハンノキ林をどうしようかということではなくて、流入負荷量を目標値にしてこれだけ削減していきましょうというプランを作っています。

 ここで着目していただきたいのは下流を守るために上流で手を打つということです。今までは問題があったところに手を下してきましたが、自然再生事業は、問題が生じているところではなく、違うところでも手を加えることができるのが特徴です。土砂流入防止の取り組みなんですが、このあたりの山とは言わないが、少し林の様な地域があります。そこらへんが牧草地化して、それにともなって流出する土砂が増えているという現実がありました。農地を元に戻すということではなくて、そういう方々の生計も維持しながら何ができるのかということで、沈砂地や河畔林によって流入土砂を抑えていこうということが始まっています。それが一点。

 もう一つは、よく皆さん目にすると思いますが、釧路湿原がこのあたりにあって、ここに真直ぐな川ができました。昔は蛇行して流れてました。こっちは山にだんだんなっていきます。昔、ラムサール指定、国立公園指定される前は、釧路湿原はどうやって開発してやろうかという場所だったんですね。こういう端っこのところは開発しやすいので川をまっすぐにして地下水を下げる。流れやすくなりますから、同じ流量でも水位は下がります。掘った土をおいてあるのが未だに残っているんですが、そういうことをしている中で、完成して数年後にプロジェクトXででてきたように、一挙保全思考に地元が転換します。農振地域が保護地域にかわって、どうしようかとなったときに自然再生という仕組みを使ってまっすぐしたところを一部試験的にここに流してみようじゃないか。うまくいかなかったらこっちのほうをいかに環境を豊かにするかという試作も用意されているんですが、とにかくやってみようということで試行しています。またこちらのほうは、ハンノキ林で乾燥化しているエリアなんですね。これは堤防です。釧路湿原はこっちからこっちへ流れてます。堤防は上流に広がってまして、ロート状に湿原をカバーしています。湿原というのは遊水池なんです。その堤防に流れこんでくる支川があるんですが、ここの流れを矢板で堰上げして、高木の繁茂するここを水攻めにしたんです。当然ここの湿地以外にも影響が出るのを覚悟でやってみよう、やったときにハンノキ林が確かに冠水深の深いところから順に、葉っぱの出る量とか活性化が損なわれる傾向が見られました。今は元通りになってますが、どういう条件でハンノキ林が生えなくなるのかを現地試験してます。

 何が言いたいかというと、こういうふうにいっぺんに物事を決めてダッとつくるのではなくて、あてずっぽうではなくて、全部計算してやって、計算どおりにならなかったら何が原因か、やめたほうがよければそれを中止して違う方法に打って出るというのをやっているのが釧路の重要なところです。事前調査を行って目標設定、施工計画を作る。その施工計画がほんとにうまくいくのか、これがなかったらあてずっぽうになるんですが、一応予測評価はしています。なかなか難しいです。専門家の先生からたくさんアドバイスや問題提起がありますが、それを踏まえて施工計画を作って、よく見てどうだったかを検証し、おかしい点があれば、施工計画あるいは目標設定まで見直しましょうということをやっているのが釧路のポイントです。

・鬼怒川(茨城県)

 今日挙が挙げている例は、いい例というのではなくて、わかりやすい例ですので、ご了承下さい。自然再生事業は、全国に24河川あります。もっとあると思いますが、本省でマネジメントしているのは24河川です。これは鬼怒川です。これが1947年、60年弱前。こちらが1960年、40年前。これが20年、これが最近です。20年ピッチの航空写真です。鬼怒川は名前の通り、暴れ川で、礫川原、こぶし大の石がごろごろしているような川で、洪水の度に澪筋が変わってしまうような川だったんですが、この通り、複列の河川、低水路がありまして、網目状に流れています。ただ40年から20年前に何かが起きたのか、一本筋になってくるんです、単列蛇行になってくる。ちょっと緑が増えてくるんですね。木が生えたらいいんじゃないかということもあるんですが、鬼怒川の河川環境は里山や森林とは全く違って、撹乱があって初めて存在する河川環境なので、これに問題を感じたわけです。

 これは横断図なんですが、ありがたいことに昭和39年からデータがありました。複列の蛇行があったというのがわかります。だんだん時期が過ぎて、この部分が13年。だんだん深くなってきています。深いところが安定してくるという傾向がありまして、航空写真を横断で確認できたことになります。河川敷を歩いてみるとこんな状態です。ほんとはこんな川原が広がっていて、せいぜい堤防沿いに柳なんかが出てきたという川だったんですが、今の状況というのは、こういう状況です。これはシナダレスズメガヤです。この草は高木が生えることができるように砂をたくさん溜めてます。要は先ほどの河床低下が起きて、この辺の河川敷の撹乱が小さくなって、初期的、先駆的に進入するこういいった外来植物が生えて、外来植物がまた砂を溜めて、その繰り返しによって、20年かけてこういう環境に今なってきたということです。

河床低下が起きると何が悪いかというと、専門的な用語で無次元掃流力と摩擦速度。川底を流れる洪水のときの水の力。洗い流す力を表したもので、これが上がっていくほど川底が掘れやすくなっていると思っていただいたらと思います。昭和39年から上がってきているんですね。我々の目安としては、摩擦速度も上がってきているということで、川底が安定化して深掘れしているのみならず、これから先も掘れていくぜっていうのが指標を見るとわかります。もっと変わるよ、っていうことを河川が言ってくれているわけです。

 このデータは何かというと、下流から上流の縦断、川の流れていく方向の距離なんですね。これが利根川の合流点付近で下流のほうでこれが上流の日光のほうにまであがっていったところなんですけど、10kmごとにグラフ作って、縦軸は川がどれだけ低下したか、土砂がどれだけ流されていったかを出しました。昭和39年から平成10年までですが、大きいところでは、10km区間で1500万立方メートルというオーダーで土砂がなくなっていってます。原因はいろいろ考えられますが、一つは、日光は大きな砂防対策をやっていて、さらにこの上流に3つの砂防ダムがあります。これで土砂が一時的に止まっている可能性があります。もう一つ砂利採取。鬼怒川は、高度成長期に首都圏の建物をつくるため土砂をいっぱいとっているんです。いくつかの原因が考えられ、検証していきました。

 下の図は砂利採取の量ですが、これによると砂利掘削でもっていたのは13くらい説明がつく。物理的にもっていったわけですから減るわけですね。ただおもしろいのはだんだん掘った量は少なくっているのに、河床低下量は増えてきていることがわかりました。ダムが3つありまして作られた頃から現在に至るまでだいたい1100万立方メートルくらい土砂を溜めてます。ある10km区間でなくなったのが1800万立方メートルくらい、というオーダーでみてください。オーダーが全く違うわけですね。話し始めると長くなるので、そういう風な検討を砂防にもやっていく。ダムにもやっていく、砂利掘削にもしかけていくということをやっていく。

 これは横軸に年代、縦にはいろんな指標を年代ごとに入れて、起こった事象がなんだったのかわかりやすいようにまとめてみました。結果、ダム、砂防で止められている寄与率は1割ずつくらいかなというのが形としてあります。残った8割は何かというとほとんどは砂利採取でもっていったというのがあるんですが、実は砂利採取で深いところができてしまって、その深いところが最初の頃は掘られても後で溜まってきたんですが、あるとき堀りすぎて掘れる力が増強して、護岸工事が手伝うことによって、どんどん下に掘れていく川になっちゃったんですね。今まで横に力を逃がしながら流れていく川が下に下に流れていく川になってしまったという仮説にいたりまして、それを裏づけしよう、としています。その検証が終わったら計画を作って先ほどの予測をして実際に工事やって評価をしていこうという話をしています。

これが自然再生の重要なところで、あてずっぽうでやらないよということです。もう一つ大事なことは樹林化です。樹林化は日本の川ではどこでもあり、珍しくありません。むしろ樹林化してないところを探すのが難しいくらいです。樹林化というのを考えたときに、自然を変えてしまうのみならず、治水安全度というのを考えた場合、低い高い、というのはありますが、今まで水害をなくそうと思ってがんばってきた。あ、よかった、これで安全だと思ったら、樹林化をしていくわけですね。こういう断面があって、だいたい川の環境を決めているといわれている、平均年最大流量、2年か3年に起きるような洪水がこのへんだと、撹乱するわけです。そうすると、今度は治水対策でこういう風に掘ります、砂利採取で掘ります、深くなるわけです。そうすると23年に起きる水位は下がります。そこにも水が溜まらなくなってきます。そうすると木が生えてくる。これ、掘ってから20年くらいかかるんです。多摩川や鬼怒川の例をみますと。掘ったあとすぐに反応しないんです。それが今、そこかしこで起き始めていまして、結局日本の川は今後放っておくと、治水安全度が上がった、樹林化をしました、下がりました、木を切りました、また戻りましたけど、また樹林化をしましたという、20年ピッチくらいで伐採作業を中心とする河川管理になってくると言えるんじゃないかと思います。これは河川局内部で議論したんですが、維持管理費が大変なことになるぞ、という話になっています。試算をすると木を切るために使われる費用は100haあたり3億円かかります。1km四方を管理するのに3億円かかるんです。こんな維持管理はとてもじゃないけどできません。どうするかという中で自然再生というのはそういうことにも関係するんじゃないか、あたりまえのことなんですけどね。安定した川、撹乱を前提とした安定した川というのは元々の器に対して、外力がバランスしてないとダメなわけです。必要以上に掘ったり、上流でダムを作ることによって、器に対して撹乱が小さくなることに対してはチェックがいるということで、そういうことを今、鬼怒川で実証して環境面のみならず治水面でもモデルとして仕上げていこうと思っています。


・荒川(東京都)

 東京を流れる川で何をやったかというと、河川敷に低水護岸があります。海の近くなんで、干満をうけていて、護岸が何のためにあるかというと、ここは地盤沈下地帯です。高度成長期に4.5m地盤沈下してます。川が全部下がって、こういうところが全部水没して、堤防を築堤してリカバリーしたんですが、河川敷が水没した関係で、波が直接この堤防を洗うようになって、当時ですから矢板を打って、コンクリートを作って、川の中の土砂を吹き上げて、高水敷を作りました。そのときの土留めです。それが今となっては河川敷として安定して葦原ができているんです。だったら試しにのけてみようかということで、のけるとき金がかかるんで地表面だけちょん切りました。

 それだけで放っておくとどうなるかと言うと、波のお陰で河岸が勝手になめらかになってきます。そういうことをしてこっちの干潟とこっちのヨシ原をつなげることはできないかということをやってます。ポイントとしては最低限しか手を加えなかったことと、波の力を使うということ。自然再生というと北海道の雄大なところしかできないんじゃないか、土地がふんだんにあるところじゃないと、という見方があるんですが、僕らがやろうとしている自然再生は社会的環境の中でできることをやっていこうということなんだというのを示すには、この事例は最適です。ただ、こんな環境が、理想形かどうかというのは疑問があります。ましてやこれ放水路なんで元々はここには川はなかったんです。そういうところでも自然再生っていう意味でできることを東京のド真ん中でやったということが、少しそういう悩みを払拭できるんじゃないかと思っています。

円山(兵庫県)

円山川(まるやまがわ)は、近畿の日本海側に流れていく川ですが、盆地形状で、一度山から下りてきて、盆地を作って、山と山の間をぬけて日本海にぬけていきます。昔から農耕がさかんなところですが、ここの田んぼにコウノトリが一番最後まで居続けてくれた。なんでって聞いたら、市長さんがそれは豊岡の人たちの人情だと言ってましたけれども、あたっているような気もします。佐渡島のトキのセンター長さんも人間のハートだと言ってました。そこでコウノトリの野生復帰に取り組んでいます。 そもそもこの鳥は大食漢で、1500gも魚や昆虫や両生類を食べるんで、野生復帰するにしても同じ環境だったら死んじゃうよねってことで、餌場の環境や安心して暮らせる環境をどうしようかということで、農林水産省と国土交通省が連携して何かやったほうがいいんじゃないかということに発展しました。田んぼと河川の空間をつなげて何かいいことができないかということをやっていってます。一つは田んぼの空間、農業用水路の空間、円山川の連続性を保ちましょうということ。落差の解消であったり水量の維持であったり、水田の中では無農薬をやりましょうとか、河川敷でも湿地環境を元に戻せるようなことをやっていきましょう、というようなことをやっています。

 ここで一番大事だと思うのは、地域が一丸となってやっている点です。コウノトリを守ろうというのはすごくわかりやすいスローガンで、私が思いますに自然再生やっていこうと言うと、情熱とわかりやすさというのがあって、コウノトリが旗頭になることによって、そうだね、守っていかなくっちゃね、ということでみんなが動いてきている。そういうところが一つのポイントではないかと思います。農水省と河川の取り組みが連結することによって、かなりいろんな生物種に対して環境提供ができるということができるが言えるわけで、そこに力を入れ、両省で手引きを作って現地をまわりましょうと話をしています。

・松浦川(佐賀県)

ここの田んぼはしょっちゅう洪水氾濫があり、石ころが入ったりしてなかなかいい米ができない。治水対策として遊水池にしましょうということになったんですが、単なる遊水池ではつまらないので、クリークやいろんな湿地環境を元に戻していこう。できたら昔の湿田を元に戻して環境教育に役立てたらどうかとかいう、いろんな提案が地元から沸き起こり、作業をやってます。元々はこういう田んぼや農業用水路とつながりながら、魚が産卵し稚魚が育ちということが繰り返されていたんですが、今は何もできてない。それをつなぐことによってその機能が一部代償できないかということで、面積としては小さいかもしれませんが、機能的な代償ができないかということです。

 ここで何故この取り組みを申し上げたかというと、事務所が地元の方々と、どうするっていうところから話を始めている点です。これでどうだ、ではなく、どうします?という気持ちから話にいっているわけです。もう一つ昔のことがわからないので、昔のことを教えて下さいというとみんなが教えて下さるわけです。時にはあそこの淵がなくなったのはあの工事が原因じゃないかとか、いろいろ分析もしてくださって、非常に助かっています。そういう関わり方が地域の主体性を生み出します。シードバンクの試験に行った際、近くにいた地元のお年寄りに何やってんですかって聞いたら、「シードバンクっちゅうのやっとんよ」ということで、丁寧に教えてくれました。朝起きて夜寝るまでその川を見続けている人がいるというのは財産です。


・淀川(大阪府)

 淀川が流れてまして、こっちが下流で大阪湾です。ここに淀川大堰があって、京阪神地域に飲み水をとってます。この堰ができてから上流は水位が安定してしまって、多少の雨では水位変動しない。ここら辺に有名なワンド群がありますが、こっちの水位が安定してますから、水の出入りが悪かったり、水がつながってなくて大雨でも来ない限り、独立しっぱなしというのもあって、水門の操作を普通だったら一定水位に保つんですが、ゲートをあけて一旦水位を下げて、しばらくおいといていっぺんにグーッとあげて、80cmくらいの水位変動をわざと起こすという実験をしています。夏の前なんで雨が来るだろうという前提でやってまして、その実験をやった結果、水質と生物に変化が現れたそうです。その変化がよかったのか悪かったのかという検証は必要で、この時期にこういう変動がいいのかというのもあるんですが、面白いのは、お金をかけずにボタンを押すだけでこういうことができるということです。撹乱を戻したということでは、これも自然再生と言えます。

・庄内川(愛知県)

 東海水害で、新幹線が止まって、2日間くらい名古屋市周辺が浸ったんですが、この緊急対策をやってます。通常だったら、先ほどの樹林化のように、ここを掘っちゃうんですけど、そうじゃないよね、ここを堀りましょ、治水の効果もありつつ、撹乱が増えてくるというやり方で、ここを掘ってるんですね。湿地環境が出てくるというやり方でやっています。大きな災害対策にまず自然再生の考え方、多自然の考え方を入れてやることもやればできるというのを示したかったわけです。

・西大滝ダム(長野県)

 信濃川のダムです。通常この川には、毎秒300立方メートルくらいの水が流れているはずなんですが、今現在、0.3立方メートル毎秒しか流れていません。11000しか流れてないんです。このダムはJR東日本のダムで、この発電で東海道新幹線が走っています。信濃川の長野の水で発電した電気で東海道新幹線を動かしている。山手線も。新幹線も山手線も止まると困りますが、ちょっとでも水量を増やして欲しいということで、電車の本数が減るときにその減った分だけ、発電を止めて、70倍くらいの流量なんですが、流しました。まだまだ不十分なんですが、社会的環境を考えた一つの例じゃないかと。これによって夏期に水温が異常に上がる現象や鮭が背中を出して上ってくるという現象がだいぶ緩和されたということです。

・キシミー川(アメリカ・フロリダ州)他諸外国の事例

 外国の川と日本の川は全然違うんで、そういう意味で示してるんじゃなくて考え方を示してます。1900年から50年にかけて多くのハリケーンなどで洪水が起きた地域で、そのために川をまっすぐにしたんだそうです。湿地の乾燥化とそれに伴う生物減少があったんで1994年から1ha以上の湿地回復と69kmにわたる蛇行復元をやっています。

 韓国の例は、規模としては狭い地域なんですが、このエリアを掘り下げて湿地環境を戻そうということで210haの湿地生態原を保全しようとしているそうです。

 北欧、デンマークです。スキャン川というところで取り組みが行われています。デンマークは、第二次世界大戦後に農地拡大を目的に95%の川が直線化されたそうです。その結果60の湿地が乾陸化したと、ただ自然再生に対する市民意識の高まりによって、蛇行復元や湿地復元が今行われています。2100haの農地の湿原化をやろうとしている。もう2002年に完成しています。実は高知に2年前に来た人が紹介してくれたんです。農業ができなくなるじゃないか、どうするんだと聞きましたら、EUができたんで農地はイタリアみたいな暖かいところに任せるんだ。うちは北欧らしい自然豊かなところをやるんだと。それで国民も納得しているということでした。事例は以上です。

■おわりに

 自然再生推進法は、地域の住民、NPOの方と連携してやっていきましょうという中で法律ができました。それを狙った法律です。第一号指定地は、荒川の中流域でした。議員立法といって、国会で議員さんが草起してつくられた法律なんですが、すぐに第一号が出ないので、なんで出ないんだということで、法律作りに関わった議員さんも苛だちまして、各省庁呼ばれて早く第一号を作れなんて話があったんですが、一号の背景を申し上げると、平成4年から実は着々と議論がなされていました。平成4年に複数の団体が自然環境の保全の要望に国交省の事務所に来られた。じゃ、議論する場をつくりましょうかということになって、複数あった市民団体も一つになって結成されて議論を集約するという動きがあって、一つの湿地再生に踏み込んでいくのが平成8年。じゃそれをどうやって管理していこうかと議論するのがまたその後。そういうのが繰り返されて平成157月に法律の指定地ができた。 最初は、いい加減にしろということで話が始まってから10年ちょっとの中できたっていう背景があるということを見逃してはいけないと思います。法律ができたからすぐ第一号の指定地ができるという発想ではなくて、じっくり議論することも重要と思っています。

■質疑応答

質問池川町の「みどりと清流を再生する会」の者です。地域住民の意見の集約の元に、平成50年の災害によって2面張りになっていた狩山川を少しでも自然に近い川に戻したいということで、町も住民の要望に応えていこうと、今年1月、福留先生の指導により、わずか12mの距離ですが、3面張りを魚道を中心に改善してもらい、地域の住民は喜んでいます。しかしこれはほんの部分的なもので財政的にも300万円くらいで、地元の6業者が協力してくれたお陰で僅かな予算の中でも工事ができました。今後6箇所のプランをたててもらっており、どうしてもやっていきたいという住民の願いがあるわけですが、現状では予算的に苦しい。自然再生法ができたということで、高知県の第一号にならんかと知事に要望も出したりしているんですが、その点についてアドバイスをお願いします。

宮武:お話を伺って、私の説明の中で確認するのを忘れていたのが、法律に位置づけるかどうかということと、事業を行えるかどうかということとは無関係になっているんですね。法律に位置づけなくても事業はできます。じゃ、なんで法律ができたかというと、今までは無担保で、行政や地域の方々や市民団体の方が議論をしていた。無担保という意味合いは、いつでも無責任に解散ができる。一方的にぬけることもできるわけです。法律に位置づけた協議会をもつと、勝手につぶしたり、ぬけることはできません。責任をもってやることになります。その効用としては、市民の方々にこういう川を作りたいという要望があって、行政がちょっと優先順位が低いんでそこはまだ、という場合でも、あの法律では、議論を始めることに義務付けが出てくるわけです。逆に行政側が何かを発案することに、何かの要請をします、そのときにこの指とまれっていうことでやるわけですね。集まってくる方がいれば、この法律に従って進んでいくということが この法律の意味合いなんです。法律で位置づけるということは、そういう意味で、非常に重要だと思いますが、それについては制約というか条件設定というのはありませんので、今申し上げたような主体が集まりさえすればいい。その6箇所をどういうふうにやっていこうか、実際にやれるかどうかの仕組みについて言えば、最初のほうに説明しました予算を要望いただくことで、行政側からできる仕組みもありますし、大規模でなければ地域自身で少しずつ改善をしていく取り組みもあるかと思います。




質問:物部川の、空港のすぐそばに住んで、高知県の内水面関係の仕事に携わっていますが、物部川の環境を見ても、流路延長70kmくらいで河口から15kmくらいのところから順番に3つの大きなダムがあります。かつては有数のアユの産地でしたが、私が住み始めてわずか20年のあいだに、河床が1m、ひどいところでは2m下がってしまった。先ほど先生の話を聞くまでは単純に、河床が下がるのは上流でダムができて土砂を止めるから仕方ないんだと、だから本気で物部川で自然再生ということを考えれば、ダムの撤去を考えなければならないと思っていましたが、鬼怒川の話の中で、樹林化が進むのはダムでの堆積分は1割くらいで、それより河道が固定され深掘れが進んだために河床が下がると。実際、物部川でも河床の低下が進み、最終的には岩盤と砂、泥だらけになるんではないかと。そうなるとアユにとってはきわめて厳しい環境になる。そういった川についてほんとに自然再生を考えれば、海からもう一回持ってくるとか他のところから土砂をもってくるとかそういうことを考えるんですが、その辺のヒントをいただければ

宮武:土砂の話は、自然再生をやり始めてかなり大事なことの一つだと立ち返ってます。何かというと水自身流れないとダメなんですが、土砂の不連続性というのもあって、いきなり特徴的に川の形が変わってしまうというのも土砂の働きが大きいんですね。そういう観点で行くと、鬼怒川の例は、ご指摘の通り大事だと思います。物部川については鬼怒川の1割というのが適用されるかどうかは検証がいりますが、大事なのは河床が下がった原因を科学的に見たほうがいいんじゃないかということです。河床が下がった川の位置にどんな砂粒があったかを見ないとダメなんですね。砂は数年くらいで下流までいきます。粘土は数時間でいったり、こぶし大の石は何十年何百年かけていくんですね。小学校で、大きな石がだんだん流れて石同士がぶつかって海にいくまでに砂粒になるって、僕は教わったんですが、全く嘘ですね。大きな石はゆっくり動いてあるところまでいくと動かなくなる。石だらけにならないというのは、それだけゆっくりしている。問題は砂なんです。粒径で言うとコンマ075mmくらいからの砂粒。コンマ2mmくらい。その幅の砂粒がかなり不連続なんです。ダムもありますし、掘れる力が変わってしまって異常に堆積したり異常に流されたり。そういうのをちゃんと見極めていって、物部川ではどれが効くのかを検証すべきなんですね。もし本川にダムがあれば1割では済まないと思います。そういう中でダムも土砂なんか溜めたくないんです。水が欲しいだけで、栄養も土砂も海に行って欲しいんです。それをなんとか流す方法を試行錯誤やってます。成功するかどうかわかりませんが、土砂バイパスといって、土砂を通常時は水と一緒にバイパスしちゃおう。ダムを経由しないで、という取り組みがごく一部始まっています。もう一つは力技ですが、上流で土砂をためる施設を作って、それを下流にダンプで運ぶ。両方ともお金がかかるんで、それだけのやる意味があるかどうかを検証した上で、やるかどうかを判断する必要があります。

質問:愛媛県なんですが、これからダムをつくるという計画にゴーサインが出たという記事を新聞で見ました。川の自然再生をしようとする一方で、まだダムをつくるのかという素朴な質問があります。前に全国にこれだけダムがあって土砂がこれだけ溜まっていると朝日新聞にのったことがありますが、自然再生事業のお話を省内でされたときに、お仲間の方が、これからもダムはいるぞとおっしゃっているのか、今のダムは見直さないかんというお話をされているのか、内輪のお話をお構いなければ聞かせてください。

宮武:困りました。内緒の話はしてないんですが、自然再生の事業を立ち上げるときに、そういう矛盾が出るんじゃないかというのは局内にもあります。環境を守るということで一番大事なのは、保全、手をつけないという原則。河川局はダムマニアではないんです。ダムをつくりたくてしょうがない人なんていません。アユ釣りが好きでっという人が多いんです。じゃ、何故ダムつくるんだというと、ダムを作ることが目的ではなくて、必要性があるかないか。いらないんじゃないかと思われるダムができているんだとしたら問題があります。ただ、治水や利水上、必要があればダムという手段も一つの手段なんです。れっきとした効果を発揮してきた歴史があります。そういう中で、ダムをつくるか、つくらないかということをきちっと検証しなければならない。今日具体的なダムで議論始めるときりがないですが、方々の住民集会や説明会で討論会でやっているように議論が大事だと思います。徹底的に議論してダムがいるのかいらないのか、いらないんだったら渇水のときには文句言わないとか、発電、山手線を止めてもいいとか、議論やった上で物事を進めていくのは大事だと思います。ただ自然再生でもう一つ大事なのは、ダムをつくったらどうなるかという話です。今の話はダムをつくったら自然が悪くなったという話ですね。それを予期していたのか、いなかったのかというのが僕は大事だと思います。あてずっぽうで環境に全然問題はありませんよということでつくったとしたら問題です。土砂の話であったり、水質の話であったり、魚の遡上の話であったり。自然再生が進めていく中で、ダムをつくったらこうなるだろうという予測技術は向上していくだろうと思ってまして、そういう議論のときの、ダムをつくったらこうなりますよ、そのかわり治水、利水では効果がありますよという議論の中で進んでいけばと思います。

質問:愛媛県の五十崎から来ました。自然再生事業は国直轄の事例ということで、思いのままに自然に近い形で取り組みをされていると思います。先ほどの年表で行くと、多自然型川づくりまでの実験と言いますか、ふるさとの川づくりモデル事業ということで小田川を整備していただいていますが、より自然に戻すことはできないかということでいろんな考えをもっているんですが、県管理河川ということで地域の思いが伝わりにくいという事情もあります。地域再生事業に取り組む手法として、国直轄以外の分での取り組みの可能性はどんなもんでしょう。

宮武:自然再生の制度で、県管理区間への国からの支援策というのは、補助金が使えるようになってます。補助金に関しては県の裁量を重要視するという方法で、不認可の部分を減らしてきているんですね。たとえば、全体の計画をつくって全体の予算さえ決めていただければ、毎年補助金をお渡しする中で自由に使っていいですよ、5年間で検証していきましょう。前は毎年毎年箇所ごとにここには300万、ここには1000万というふうにつけていっていたのをまとめて出せるようにしました。自由度ができてきて、治水の予算で付いていたお金を自然再生のほうに年度の中でやりくりするということもできるようになっています。使いやすさという点で制度が緩和されているということがあります。あとは国が県のためにこうやってますよ、こういう情報をまとめてますよ、といったことをお話しするとか、研修で講師をさせていただくとかそういうことは心がけています。

質問:徳島から来ました。質問というより意見なんですが、全国の川を見てみるとブロックと土の土手、土の土手には萱を主体に下草が生えてるんですが、全国均一な河川に見えます。生態系も非常に貧弱です。ヨーロッパに行くと堤防、あるいは川の中にも河畔林があり生態系も複雑になっているし、土手も人が散歩するとか動物の生息空間としても豊かになっています。この辺を河川局として、考えていけないのか。木を植えるということに関しては問題があると思いますが、たとえば種をまくとか、そういった感じで河畔林の育成を試行していくべきではないかと思います。

宮武:おっしゃるとおりだと思います。その部分については、今お話した、内容と現場が一致しているかどうかは僕も悩みがあります。

少なくとも舵は切ったと思っているんです。ただ、河川を管理している主体を大きな船にたとえると、大きな船なんですね、ブリッジには施策を考える人間が10人くらいいて、舵はきったが、最後尾にいる船員さんは何が起こったかわかってなかった部分もあったんじゃないかと思います。それを国土交通省の僕みたいな立場になる人間が、常に伝えていくというか、話題提供をしていくとうことが大事かと思っています。最近はメイルとか、簡単に全国にわっと出せるので、そういうところで情報を流したり、今日お配りした資料にあるとおり、自然再生のセミナーを企画して全国に発信しています。精神は間違ってないということは私も確信しているので、それをいかに最後尾の船員やエンジンルームの人たちにまで伝えていくのかというのが悩みであり、今日の講演と現場とのギャップの一つ理由になっているんじゃないかと思います。ダムの話にも、いろんなことに共通しているのが、住民の人が判断しなければならないという時代が確実にきています。堤防というのは全部川を閉じ込めてしまう、という概念も終わっています。そういうときに河畔林をどうするか、住民と一緒に考えていかねばならない。ダムの問題もそうです。未だに行政でというのもありますが、金がなくなったからボランティアにとかいう単純な話ではなく、舵はそっちに切られています。

                                     平成16415バイオフィット研究会第65回定例会にて

※本文中の写真・図表はご講演で使用された資料を、許可を得て掲載させていただきました。
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