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株式会社 西日本科学技術研究所

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四万十川だより(5)−“天然物”の値打ち−
 四万十川河口では、冬から春にかけて天然アオノリ(スジアオノリ)が収穫されます。アオノリは、河口周辺に住む人々の(農閑期における)貴重な収入源でもあります。昭和55年度(1980年度)にはアオノリの出荷額が2億円近くにもなったそうです(山崎,1983)。今年は、昨年12月以降アオノリの生育が良く、川一面にアオノリが長く繁茂しており、河原では天日干しにされたアオノリ独特の良い香りが漂っています。ところが、今年はアオノリが久しぶりに豊作であるものの、出荷額が伸びないというジレンマに陥っています。これには理由が二つあって、一つは他県の養殖物に押されて単価が下落したこと、もう一つは漁業者の高齢化に伴ってアオノリ漁の従事者が減少したことが挙げられます。
 本コーナーで以前ご紹介したテナガエビも四万十川の天然資源の一つです。このテナガエビ資源にも異変が起きているようです。四万十川での主な漁獲対象種はミナミテナガエビとヒラテテナガエビの2種ですが(平賀・山中,2005)、市場関係者の話によると、ここ数年はミナミテナガエビがほとんど入荷されなくなり、ヒラテテナガエビばかりになったと聞きました。また、私の知り合いで、四万十川下流でテナガエビ漁(筒漁)に従事されているHさんに過去10年間の漁獲日誌をいただいてCPUE(10筒当たりの重量/日)を求めてみると、2010年以降、漁獲量が激減していることがわかりました(右図)。
 アオノリやテナガエビは、四万十川が毎年産み出してくれる貴重な天然資源です。この“天然物”がもつ素材の良さを広くアピールすることは、出荷の拡大に向けて大きなプラスとなることでしょう。また、四万十川が産み出す自然の恵みを持続的に享受するためにも、今後ともアオノリやテナガエビなど四万十川の天然資源に関する基礎研究を積み重ねて(例えば、平岡・嶌田,2004)、科学的な裏付けに基づく資源回復策を講じることが望まれます。
                                  (四万十リサーチセンター 東 健作)

【引用文献】
平賀洋之・山中弘雄.2005.四万十川中・下流域におけるミナミテナガエビおよびヒラテテナガエビの成長と繁殖.海洋と生物,27(1):3-9.
平岡雅規・嶌田智.2004.四万十川の特産品スジアオノリの生物学.海洋と生物,26(6):508-515.
山崎武.1983.大河のほとりにて.高新企業梶C高知.

汽水域の河床に繁茂するスジアオノリ

スジアオノリの河原での天日干し

テナガエビ類のCPUEの経年変化(東,未発表)

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